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アルビノから学ぶ、メラニンの役割

アルビノという言葉をご存じでしょうか?


albinoとはポルトガル語の(albo)が示すように、メラニン合成に関わる遺伝子異常により先天的にメラニンが欠乏し、体中が白くなって生まれてくることです。アルビノはヒトを含む多くの動物種で確認されており、日本の一部の地域では古来より白ヘビを信仰の対象として崇めていたそうです。ヒトにおいて医学的には先天性白皮症(眼皮膚白皮症:OCA)と呼ばれており、日本では毎年160人ほど特定機能病院での受療があるそうです。今回はこの病気について学びながらヒトでのメラニンの合成と役割について勉強していきます。


では、そもそもメラニンはどのように生産されるのでしょうか?


メラニンはチロシンを原料として、皮膚基底膜に存在するメラノサイトで合成されます。チロシンはメラニンの他にも甲状腺ホルモンやカテコラミン(ドパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン)の前駆体でもあります。

血中で運ばれたチロシンは銅含有酵素であるチロシナーゼによって酸化されドーパに、さらにチロシナーゼにより酸化されドーパキノンへ代謝されます。ドーパキノンは自動酸化したのち互いに結合することで黒色のユーメラニンが合成され、システインが存在する場合はシステインと結合することで黄色のフェオメラニンが合成されます。ユーメラニンが多いと肌も毛髪も黒っぽさが濃くなり、フェオメラニンが多いと肌色は白色となり毛髪は赤毛かゴールドまたはブロンドになります。フェオメラニンは白人に多く含まれているメラニンといわれ、ユーメラニンは黒人に多いとされています。これらの反応はメラノサイト内の小器官であるメラノソームで行われ、皮膚において完成したメラニンはメラノソームに包まれたまま樹状突起をつたって隣接したケラチノサイトに輸送されることで肌に色が生まれ、シミや黒子になったりします。眼では虹彩や脈絡膜の色素上皮細胞に多く沈着します。


それでは、先天性白皮症では何が起こっているのでしょうか?


色々タイプはありますが、多くはチロシナーゼの異常によりメラニン合成が阻害されています。メラニンが欠損することで皮膚や髪は白色となります。またメラニンによる紫外線保護作用が欠如しているため日光角化症や皮膚癌のリスクが非常に高いです。加えて虹彩の色素が無くなることで淡青色となり、眼球に入る光量を調節できずに眩しく感じてしまいます(羞明)。また脈絡膜の色素が欠如することで眼底部の血管がみえて淡紅色となり、眼内で光が散乱することで弱視となります。

このようにメラニンは皮膚に色を付加することで有害な紫外線から人体を守っているだけでなく、眼底で光が余計に反射しないようにしたり、虹彩による光量の調節を可能にしたりしています。

※因みにホワイトタイガーはアルビノではなく白変種と呼ばれるそうでアルビノとは異なるらしいです。ホッキョクグマとかヒトの人種による肌の違いとかと同じなようです。

メラニン合成能は正常でメラノソームの発現量の違いによるみたいです。

(文責 土屋一也 2020/03/04作成)

【参考文献】

眼皮膚白皮症診療ガイドライン 日皮会誌:124(10),1897-1911,2014(平成 26)

https://www.shouman.jp/disease/details/14_01_001/

OCA1 U.S. National Institutes of Health. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1166/

Karen Grønskov, Jakob Ek and Karen Brondum-Nielsen, Oculocutaneous albinism, Orphanet Journal of Rare Diseases 2007

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